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Interview 01
浜崎貴司(FLYING KIDS)×柴田修平(STUDIO IKKI 主宰) 2020.08
浜崎貴司 (↑写真左)
1965年6月11日生まれ。栃木県宇都宮市出身。1990年フライングキッズでデビュー。Vocal担当。
シングル19枚、アルバム13枚を発売後、98年に解散。その後、ソロアーティストとして活動。2007年FLYING KIDS再集結。
FLYING KIDS の最新情報はコチラ >> http://fk6.jp/
柴田修平(↑写真右)
前作『ヘアカタ。(女性モード社)』プロデューサーにして、『カミガタ。(女性モード社』発起人。 映像プロダクション【STUDIO IKKI】代表 中央線の代表的ヘアサロン【阿佐ヶ谷 3349】オーナーも務める。永遠の反抗期。
STUDIO IKKI(スタジオイッキ) HP
https://studio-ikki.asagaya3349.com
浜崎 髪、すごい色ですね
柴田 今日のために、昨日染めました
浜崎 黄色?黄緑? 蛍光っぽく見える
柴田 美輪明宏さんと同じ色なんです。エレクトリックバナナっていう色味なんですけど
――お二人はFLYING KIDSの アソボMV撮影の時に初めて会ったんですか?
柴田 そうですね。お世話になりました
浜崎 こちらこそ。撮影の時はあまり話しとかする時間なかったんですよね
柴田 すみません、スケジュールがカツカツで(笑)
浜崎 このお店も含めてですけど、撮影で初めてお会いした時には不思議だなぁっていう印象を強くもってましたね。何者なんだろうなぁっていう
――このお店に飾られているミュージシャンやマンガなども修平さんの世代の趣味ではないですよね。どちらかというと浜崎さんくらいの世代がドンズバじゃないかと。
浜崎 自分のリアルタイムのものと、ちょっと上の世代の文化が混じってるくらいかな。パンクとかはリアルタイムに近いですね。今おいくつなんですか?
柴田 34です
浜崎 じゃあ全然ですね。どういうきっかけでこういうものに流れていったんですか?
」
柴田 時代もバラバラなので一概には言えないですけど、パンクとかはビジュアルから入った感じですね。なんかカッコいいなこういう人たち、みたいな。TVで過去の映像を見たりして
浜崎 そういうのってチョイスの幅があると思うんですけど、セレクトがズバリなんですよね。これは良いけどこれはダメみたいな、細かい線引きってあると思うんですけど、その線引きが意外と一緒だなぁっていう感じがしていて
柴田 嬉しいです(笑)
浜崎 最近プリンスのライブ盤みたいのが再発売になったんですけど、そこにコンサートで流してるBGM…プリンスが選曲したBGMのリストみたいのが載っていて、それが自分たちの趣味とドンピシャなんですよ。ボクらの大好きな人たちばっかりで、これはダメっていう人は入ってないんです。プリンスが憧れて尊敬している音楽のイメージが、プリンスを通じてちゃんとボクらに伝わっちゃってるのかもしれないですね。
そういう、ここは良いけどここはダメみたいな細かい線引きが、このお店に来た時も感じられてちょっと不思議だなと思ったんです
――確かに、80'sロックなら良いとか、古いものが好きっていうふんわりした感じではなくて、明確に価値観というか美意識がありますね。
柴田 そんなに分析されたことなかったですけど(笑)
浜崎 分析っていうか、こうやって目の辺りにすると…、正解・不正解みたいのはボクらが勝手に判断するんだと思うんですけど、これは正解だなっていう感じがしましたよね
――そういうのって、醸し出ちゃうんでしょうね。服装だったりインテリアだったり、浜崎さんの場合は音楽からとか。にじみ出ちゃうんでは?
浜崎 そうみたいなんですよねぇ、不思議なもんでね。バレるっていうか、… 匂うっていうんでしょうかね。だから、同じ穴のムジナというか言葉にしなくても解っちゃうみたいな。
そういう部分って、言語以外のコミュニケーションしてるんだなっていうのは感じますね
柴田 僕、浜崎さんとちゃんとお話ししたのは今日が初めてなんですけど、MV撮影の時は、待ち時間の間もあまりスマホとか見ないで、わりとずっと真っ直ぐ壁を見てたり
浜崎 そう?(笑)
柴田 だったんですけど、まぁ、怖かったんですよ(笑)。怖かったんだけど、でも安心するみたいな。今、同じ穴のムジナっていうワードが出てちょっと嬉しかったんですけど、MV撮影の時は言葉ではコミュニケーションできなかったですけど、なんか居心地いい方だなって感じてましたね
浜崎 待つことみたいなのを、だんだん歳を取ってきて覚えてきたっていうか、できるようになってきたっていう感じはあって。若いうちは気も短かったし、とにかく次にすぐ行きたい、何か次のことに進みたいっていう思いが強かったんですけど、最近はそういうことが…無いわけじゃないんですけど、待つことは覚えた。学習した感じですね。
待つ感じっていうのが悪くないなぁって思い始めてるっていうか。それは理屈で、例えばいろんな人がいろんな準備をしていていろんな他人の事情もあるからこうなってるんだろうっていう部分を理解できるようになったっていうのもあるんだけど。それだけじゃなくて、ボーッとしてることがわりと楽しくもなってきたっていうことですね
柴田 浜崎さんが壁を見てらっしゃるのを見て、“やべー、怒ってるのかな”とか思ってたんですけど(笑)
浜崎 いやいや、全然怒ってない。ポスター眺めてただけだから
――2人とも、黙ってたら怖いと思われるタイプじゃないですか?
浜崎 黙ってると恐ろしいというのは言われ続けてもう30年以上経つんですけど
柴田 すみません!(笑) でも、不思議と居心地は良かったんですよ
浜崎 昨日、カーリングシトーンズの撮影があってね、雑誌の撮影だったんだけど、表紙がいくつかあったんですよ。そこで『表紙なので、にこやかにお願いします』って言われるわけ。表紙なので!っていう、すごいプレッシャーかけられるの。表紙っていうのは絶対にこやかじゃないとダメなんだって。トータス松本君とか笑顔がすごい素敵で、ああいうふうになりたいなぁと思ってたんですけど、なれなかった(笑)。無理くり笑って、大丈夫かなぁみたいな。
最近は表紙って、怖いとダメみたいですね。昔は松田優作さんとかショーケンさんとか、イキってたわけですよ。表紙だろうが何だろうがガン飛ばすみたいな時代があったんですけど、自分はそういう時代の影響もあるのでなんとなく別にいいだろうって思ってるんですけど…、許されないね、今はね。やっぱり笑顔の時代だなって。特に今は世の中がそんなによろしい感じじゃありませんから。困難がたくさんあるから、より一層そういうのを求められるなぁって気がするのね。
これからちょっと笑顔の練習でもコソコソやってみようかなって思ってるんですけど(笑)
柴田 その時代についてはどんな気持ちなんですか? 松田優作さんとかショーケンさんの時代が良かったなっていう感覚ですか?
浜崎 いや、それは自分がもう染みちゃってるやつなので、そこは更新しなきゃいけないわけですよ。っていうふうには思ってます。半分くらいは、まぁ変えないといけないかなぁなんて思ったりします。バージョン上げるっていうか
柴田 アップデートですか
浜崎 そうそう。アップデートするっていう感じ
柴田 自分は美容室っていう場所にいるので、笑顔は求められますね。だからこそ、別にここは要らないんじゃないかっていう、例えばWEB媒体の場合はガンを飛ばすとか。そういうのがカッコいいなと思っちゃうので、スタイルとしてはやったりしてますね
浜崎 笑顔じゃなくてもいいと思ってるんですけど、それが現状の中で通用しないことも当然あるし。だから、自分の価値観が常に正しいっていうふうには思わないようにしてますね。自分の中では正しいけど、これが世の中で正しいと思っちゃいかんっていうか。
例えば、FLYING KIDSのニューアルバムが出ますっていうのをSNSで告知するともちろん反応はあるんだけど、その翌日に 浜崎、漬物を漬けました。こんな感じですって写真を上げたら十倍くらいリアクションがあって。浜ちゃんすごいとか、美味しそうとか、一緒に食べたいとかさ。なんでアルバムに対してじゃないんだ!みたいな(笑)。
だけど、実際問題、漬物のほうが気になっちゃうんだと思うんですよね。だから、それはしょうがねぇなと思う。自分の哲学とか音楽…、アルバムに込められている自分の考えだとか信念と言っても過言ではないものが、決して正しいわけじゃないっていうことを、まざまざとその漬物の事件によって知るっていう。自分の価値観は漬物に駆逐されたっていう感じは…、まぁ漬けてるのも俺ですけどね(笑)。その辺は騙し騙し、様子を見ながら生きていくっていうか。あまりこう頑なに思わずに、しょうがねぇなと思いながら。漬物を出しながらアルバムを宣伝していこうかなって(笑)。
まぁ、自分が発信したことをみんなが楽しんでくれれば、それはそれでいいかなとも思いますけど
――漬物がきっかけでアルバムを聴く方もいるかもしれないですし(笑)。
浜崎 いや、確実にいる…と思ってないと、…やってられない(笑)。でも、こういうスタイルの美容室ってあまり見たことがなくて、映像作品とか新しいことをやろうとされてるわけじゃないですか。そういう時はやっぱり意志みたいなものが必要なんですかね
柴田 僕からすると映像も、語弊があるかもしれないですけど、浜崎さんにとっての漬物に近いというか。本業はこっち(美容室)にあって、でも、より多くの人に自分のやりたいことを見せるってなると動画とかのほうがわかりやすかったりする。で、そこからリアクションがあったらお店にお客さんが来てくれたりとか、面白いことやってるねっていうのがあるので。ちょっと漬物的な感覚もわかるような
浜崎 いや、漬物、そんなちゃんと考えてるレベルじゃないのよ。本当にただ漬けてるだけだから(笑)
――表紙は笑顔って話にも通じますけど、多くの人にアピールするには入り口として一般受けするほうが単純にいいのかなとも思いがちですが、自分のスタイルはこれだっていうものを持ってるお二人にその辺のこだわりを伺いたいです。
浜崎 僕の場合、今の活動が30年以上続いているわけなんですけど。こだわっている事っていうのは当然あるんですよね。最初に話しが出たように、ある種それが匂いとなってそういう人たちが集まる、っていう。近い匂いを好きな人たちが集まるみたいなものがあるんですけど、それが良いとか悪いとかっていうのは当然その時代の波とか年齢とかいろんなもので、正しいとか正しくないとかっていうことに常に晒される気がしますよね。
でも、そこにしがみついて残そうとかっていうんじゃなくて、そんなことと向き合って波に揉まれてゴロゴロ転がりながら、それでも何か握りしめてるものみたいなのがあって、それがいまだに続いてるっていう感じだと思ってるんです。投げ捨ててもいいやくらいの感じで挑んでいかないとうまくいかないんですよね。その波を乗り切れないっていうのかな。自分たち…、FLYING KIDSとなるとまたちょっと別なところがあるんですけど、個人的な部分のアイデンティティーみたいなものっていうのは、すごくある。
ちょっと複雑な言い方になるんですけど、絶対やりたくないなって思うことはいっぱいあるんですよね。でも、そのリストの中でもいくつかやってたりする。だけど、まだ残ってるものがあるので、そういうものは自分の感じなのかな。アイデンティティーっていうようなもの、自分というものを表現してるものの何かになってるのかなって気はするんです。そこがFLYING KIDSとなるといろんな個性の集合体ですから、そうも言ってられない。
ファンクとかグルーヴとか、好きなミュージシャンでいえばプリンスだとか、そういうキーワードみたいなものにみんな寄り添いながら全員で動いていくって感じなんです。
ただ実際、今回はこの言葉で行きましょうみたいに、はっきりは決めませんけど。今回のアルバムに関しては、ファンク中心、よりファンキーなものでいこうっていう旗みたいなものはありました
――アルバムタイトルからして、ズバリですよね。
浜崎 うん。そこが“FLYING KIDSの場合はちょっと違う”って言った部分なんですけど、個性の集合体だからそれをわかりやすく伝えたほうがいいだろうっていう思いはありましたね。だから、ファンクであるとかファンキーであるってことを敢えて目立たせるというか。それで全員を表現していく。敢えてその説明を、まぁちょっとふざけながらですけど、していくっていうふうにしましたね。
自分のやりたいことをやりながらも、FLYING KIDSの旗みたいなものを敢えてわかりやすくしてるし、たぶん今後のFLYING KIDSって…、今回のアルバムで全部できた感じがするんですよ。やっとバンドが完成したような気がしていて。
今まではいろんなことを吸収し、学習し、全員で勉強しながら進んでいった気がするけど、今回のアルバムで何か一つやっと本当にできあがった。30年以上かけて、それができたような気がするので。ここから先は金太郎飴でもいいかなって思うくらいの感じで今はいるんですよ。
次を作り始めたらどうなるかわからないし、当然他のメンバーの意見もありますから、別のアイデアとかそういうエネルギーによって変わっていく可能性はあるんですけど。もう30年やってきたから、店に並ぶ商品は絞っていこうかなと思ってるんですよ。なので、アイスクリームも作ったし和菓子も作っちゃったわけですよ。今度は例え話が甘味処になってますけど(笑)、チョコレートもあるし。なんだけど、うちは和菓子だけでいいんじゃない?っていう。そういう絞り込みみたいなのはしていこうかなって思ってるんです。
そうやって商品として研ぎ澄ませていくっていうか、無駄がなくお客さんに楽しんでもらいたい。これって何?って悩んだりしなくて済むような商品にしてあげたいなって。お店に入って見た瞬間、あぁFLYING KIDS最高!…っていうような商品になったらいいなと思うんですよ。 なんかここ新しくなってるけど、どうなの?っていう部分も必ずあるんです、商品だから。でも、それはわからないように今後はしていきたい。気がつかないけどそうなってて気持ちよかった、みたいな。そういう形にならないかなって思い始めてます
――FLYING KIDSはコアな方向へ向かっているようですが、一方修平さんは手を広げている段階ですよね、新たに映像を始めたり。その時のワクワク感みたいなものってあると思うんですけど、今の いろんなことをやってみたいっていうモチベーションとは?
柴田 雑誌にしても映像にしても、全部お客さんから始まったことなんですよ。自分の顧客の子なんです、今やってる映像のメンバーも。その子はもともと大手(の映像会社)で、大きい予算かけていっぱい人を使ってっていうような組織にいて、自分はこのままでいいのかみたいな。そういう話を聞いて、何かやれないかなとか考えて。
僕、周りにいる人みんな、自分のお客さんなんですよ。サロンってフランス語で“人が集まる”みたいな意味らしいんですよね。人が集まるので 生き残るために何する?じゃあこれやってみようかみたいな。そういう感じの延長でしかないっていう感じなんです
――阿佐ヶ谷3349があって、そこに集まってきた人たちの化学反応で何かが生まれていくっていうことなんですね。
柴田 映像クリエイターのIKKIって“一向一揆”の一揆から取ってるんですけど、バカにした人たちをギャフンと言わせられたらいいなみたいな。まぁ、別にバカにされてはいないんですけど(笑)、せっかく才能があるのにあまり日の目を見ない人たちもいっぱいいるから、一緒にこのコミュニティーで何かできたらいいなっていう感じで、結果それが拡がってるっていう感覚なんですよ。もちろん社員はいるので、どう生き残るか、メシ食わせなきゃとかそういう部分もある。これはイケるなっていうのはちゃんと考えて動きますけど
浜崎 仲間が集まるような、さっきの話じゃないですけど人間が醸し出してる匂いとか、自分の意思みたいなものがダダ漏れしちゃってる可能性はありますよね。それを嗅ぎつけていろんな人が来て。で、僕らがお世話になったようなビデオまでできちゃうっていう。でも、ただ仲間が集まってやりましょうっていう話だけだと、そこまで行くのかな
柴田 そういう意味でいうと、さっきのアイデンティティーの話じゃないですけど、自分はカメラがいつも自分を見てると思っていて。極端な話、家の前にゴミとか落ちてると、急いで出勤しなきゃいけない時には一回そのゴミを通り過ぎるんですよ。でも…、 いや、拾おうって戻って掃除したりするんです。それは誰に褒められるわけじゃないんですけど、自分は自分を見てるので、自分を好きでいたいから。
コンビニのパスタを食べたあとの容器とか落ちてるんですけど、少なくともそれを捨てる側じゃなくて良かったなっていうふうに思っていたい。全部はできなくても、俺えらいな、俺カッコいいなと思っていたい。っていうのは大事にしてます。それがもしかしたらエネルギーとなって、一緒にやろうっていう仲間が来てくれるのかなっていうのはちょっと思ったりしますけど
――人からどう思われるとかじゃなくて、自分がカッコいい自分でいたいという。
柴田 そうです。もちろん人から言われるのも嬉しいですけど(笑)
――ここで出会った仲間と映像制作をスタートさせて、FLYING KIDSのMVを撮ることになって、こうしてお互いのアート観に触れる対談も実現してという流れも興味深いです。
浜崎 昔はそういう人が集まる…、例えばゴールデン街に映画関係者がいたとか編集の人がいたとかありましたけど、今はこういう時代なのでなかなか集まれないですから。余計ね、サロン的なものの価値っていうのを改めてこの場所で、…MVまで作らせてもらったわけですから、見直すっていうか素晴らしいことだなと思いましたね。感謝です
柴田 こちらこそ。ありがとうございます
――この動画や誌面を見ているのはアートやファッションに関心のある方ばかりだと思うんですけど、そんな同志だったり後輩だったりに向けて何かメッセージをお願いします。
柴田 こんな時代なのでちょっと言いにくいですけど、行動して欲しいなと。まず動くことかなと
伏島 修平さんのLINEのアイコンに 死ぬ気になってやってみな。死なねぇからっていう言葉があって、あれがすごく好きなんだよね
柴田 あんまり言うとパワハラみたいになっちゃうけど(笑)。でも、はっきり言いましょう 死ぬ気でやれよ、死なねぇからと。行動したほうがいいっていうのはあります。
ビジネスでよくPDCAとか言われるじゃないですか、PLAN=計画、DO=実行、CHECK=評価、ACTION=改善って。僕の場合は、DDDD。やっていくうちに浜崎さんのように 待つこと、仙人の域に行けるかもしれない。それもまず行動しないとわからないことだから
浜崎 僕は、これほんと普通の話になっちゃうんですけど、これからの時代って、先人の方々がやってきたことをすべて吸収してボタンひとつで表現できるような時代になっちゃうと思うんですよね。
カメラ然り、音楽然り。僕らの作業もレコーディングには最終的にマスタリングっていう作業があるんですけど、それも以前はエンジニアがいて、凄まじい高価な機材があって、一等地にスタジオがあって、そこでものすごい高いギャラを払ってやってたんですけど、今はマスタリングのためのソフトがあって数万円でその技術とかがそこに収められてるんですよね。それを今回使ってみたりしたんですけど、素人感が出ちゃうのかなと思って作業したら全然。僕らはキャリアがあるのでそれも含めて作業すると、なんならずいぶん良い音じゃない?みたいなものになっちゃったんですよね。そういうのって他の機材もいっぱいあるんです。
例えば70年代とか60年代のギターアンプ・シミュレーターとか。ビンテージのアンプなんか買うとお値段も大変だしメンテナンスも大変なんだけど、機械の中に全部データが入っていて、そういう音が出ちゃう。ドラムのキットの年代とかも設定すると、年代別のセットが組めたりもするんですよ。サウンド的に“これでいいか”って位、再現性が高いんですね。
じゃあ、そんな中で俺らは何をするのかっていう話なんですよ。それは簡単で、無いものを作るしかないんです。単純なテーマだし、そのことに関しては今も昔もずっと一緒なんですけど、無いものを作るっていうことをもう一回改めて確認しないと、在るものを作っちゃうなっていう気がしていて。でも、それが表現の全てだし根源だと思うんです。その、無いものを作るっていうことを自分自身含めてもう一回かみしめていかなきゃいけないなって思ってますね
Interviewer:舟見 佳子
Photographer:丸山 剛史
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